池田晶子没後10年記念トークイベントで永沢まことさんの話を伺う
余白を残すようにしています。何かっていうときに、がちがちだと何も動けなくなることを何度も経験しているからです。
永沢まことさんに久しぶりにお会いする
2015年8月の吉祥寺の個展(*1)、10月の湘南T-siteでのトークショー(*2)でお会いしてから、1年半ぶりでした。
永沢さんの本は、すべて読んでいたつもりが、こちらの本を存じ上げていませんでした。
池田晶子さん著、永沢まことさん絵という2001年3月に出版された一冊。
サインをいただいていました。
池田晶子 没後10年記念 トークイベント
B-ギャラリーのトークイベント(*3)をおしえてもらったのが、開催前日の夕方。
あのときの本の池田さんのことを、永沢さんがお話しする機会なんて貴重だとすぐに申し込み。
会場につくと、真っ赤な冊子の椅子の上に置かれています。
池田晶子の
言葉と
出会う
「さて死んだのは誰なのか」
池田さんと一瞬ドキッとする文字が、冊子におどります。
もうひとつの冊子には、愛犬と一緒に写る柔らかい表情の池田さん。
トークショーがはじまるまでの間、壁一面を池田晶子さんの言葉にぐるりと取り囲まれます。
口を半開きにしながら、そうなんだけどねという思いがわきあがります。
池田さんとの出会い
池田晶子さんと永沢さんがつながったきっかけは、読書カードを出版社におくったことからでした。
小林秀雄さんへの手紙を永沢さんが読んだときに、今までに読んだ文章では感じたことのない不思議なものを感じたといいます。
他では書いていないこと、誰にも書いていなかったことを、池田さんの全人生をかけた文章でつづられていること。
ちゃんと人に自分の思いや気持ちを伝えることを、文章にして書けているといったことを、読書カードにしたためたそうです。
すると、数か月後に、池田さんから永沢さんへ直筆のお返事が届きました。
どちらかといえば下手だけれど、気持ちが入った池田さんの手書きの文字。絵を描く永沢さんにはその手書きの文字だからこそ、伝わってくるものがあったのでしょう。
一年後、新宿伊勢丹の個展のお知らせの葉書きを池田さんにおくりました。
そして、その会場にいらした池田さんと偶然に居合わせた永沢さんがお会いしたのが初対面でした。白いブラウスを着て、髪の長いすらっとしたたたずまいでした。
2001年哲学の旅へ
ヨーロッパに滞在することが多かった永沢さんは、途中に何か所か合流しながら、スケッチをしたそうです。
その中でも印象深かったのは、当時101歳でも現役のドイツの哲学者、ガダマーさんとの対談。
孫とおじいちゃんくらいの年の差がある池田さんとガダマーさん。 どんな小娘が来たのか?といった表情だったガダマーさん。
一方の池田さんは、権威というものにまったく臆していない、話が通じる人ならばそのままで行く人でした。一時間ほど、通訳を介して、日本語とドイツ語が飛び交い、存在やDasein (ダーザイン)について熱く語り、最後には、同じことを話していたんだねとなりました。
存在と無について語り合ううちに、だんだんとうれしそうになってきたといいます。その瞬間をとらえた原画を永沢さんがみせてくださいました。
2001年哲学の旅P.10より。
池田さんの肩越しに笑みをたたえながら語るガダマーさん。
この絵を池田さんに見せたときに、私の顔は?と聞かれたそうです。
新宿に挑む
ちょうど一週間前にかきあげたばかりという、新宿歌舞伎町の一枚(*4) をもってきてくれました。池田さんがこの絵をみたら、きっとよろこんでくれると思うんだとおっしゃいます。
永沢さんは、構図を考えず、終着点に向かって絵をかいていきます。
これは、絵を描くことに限りません。直感で動く方が、自然にものを見られる。
旅の工程でどこに行こうか、事細かに決めると確かに楽だけれど、それだとやりたかったことが、単にスケジュールをこなすようになる。自分の考え、意識、ペースをもっていれば、偶然にキャッチできる。
影響を与えた言葉は?
池田さんと話したことで、永沢さんの作品に影響を与えているものはあるか?という質問に対して。
どんなにすばらしい作品を観たとしても、自分でいったん消化しないと自分の言葉は出てこないよ。
なにかの言葉がピッタリとはまったというよりは、それまでの自分がもっているものの一部にカチッとくる感じかな。そう、ピコ太郎みたいにね。
ここで、ピコ太郎!と、丸椅子からのけぞりそうになりました。一時間の予定が、一時間半にもわたって永沢さんが語っていました。
空白はあった方がいい
話を聞き終わって、数日、まだ反芻しています。
永沢さんがお話しした言葉を、書きとめたメモを読みながら、行間に込められた思いはなんだったんだろう。自分はどうしていこうかな?と考える時間を持ちました。
この2016年4月から1年間、ゆか先生(*5)にお世話になり、言葉、書くということにとりくんできました。
永沢さんと長年のご友人である、チホさんのご厚意で、永沢さんの作品とも一緒に写真をとっていただきました。
描くと書くは遠いものじゃない。
そんなセリフがふと浮かんだ時に、そういうことか、納得しました。
池田さんの著作を読んで、その思いを感じてみます。
link
(*1) 2015/8 吉祥寺の個展にて
(*2) 2015/10 湘南T-sideにて
(*3) B GALLERY(Bギャラリー)おしらせ
(*4) 永沢まことさん 新宿に挑む
今月のひとこと 2017年2月 | 永沢まこと・オフィシャルブログ
(*5) 文章力養成オンラインサロン
2017年に取り組みたいことがクリアになりました。